2019/03/13

【山谷剛史の"デジタル中国"のリアル】
中国の地方都市ではどんなスマート製品が身近にあるのか

中国を拠点とし、中国・アジアのIT事情を現地ならではの視点から取材・執筆。IT系メディアやトレンド系メディアなど連載多数。著書に『中国のインターネット史 ワールドワイドウェブからの独立』(星海社新書)、『新しい中国人 ネットで団結する若者たち』(ソフトバンク新書)などがある。

スマートテレビはスーパーマーケットの家電売り場でも幅を利かせている

前々回前回で振り返ったように、スマートフォンはここ数年ですっかり中国人の生活に欠かせない存在となった。2018年末の時点でモバイル通信利用者は8億1,698万人、3G・4G契約数は13億1,000万となり、スマートフォンはインターネットを利用する最も定番のデバイスとなっている。スマートフォンを使いこなすようになると、それに続くスマート製品を何か導入したくなる人も出てくるだろう。近年ではさまざまなスマート製品がメーカー各社から登場し、選択肢が増えてきた。この中で中国の地方都市の日常生活で見かけるような製品に絞って紹介していこう。

3万円台で55インチが買える、普及が進むスマートテレビ

中国人にとってスマートフォン以外で一番身近なスマート製品はスマートテレビだろう。ラオックスを買収した蘇寧電器(SUNING)をはじめとした家電量販店はもちろんのこと、スーパーマーケットの家電売り場や、各家電メーカーのアンテナショップでも見かける。テレビ売り場ではスマートではない従来のテレビを探すほうが難しい地域もあるかもしれない。それほどまでにスマートテレビは身近で、価格面でも高価な商品ではないのだ。

2019年3月時点で、2,000元(約3万2,000円)出せば、55インチのスマートテレビが買えてしまう。あるいは既存のテレビにセットトップボックスをつけてスマートテレビ化するという手段もあるが、もうテレビがあまりに安いため、買い替えるほうが自然であろう。中国の都市部の住宅のリビングルームは日本のそれよりもずっと広い。人々はより大きなサイズのスマートテレビへと買い替えていく。

テレビ番組からオンデマンドへとニーズが移り、さらにオンデマンド向けの限定目玉コンテンツが続々と制作される中、スマートテレビのニーズはますます高まっている。

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通信事業者のショップでもスマートテレビがプッシュされている。ブロードバンド回線と視聴契約が年間280元(約4,480円)、1日わずか0.77元(約12円)とうたう中国移動の広告

筆者はこれまでいくつかのスマートテレビを購入したが、いずれも基本的にはリモコンを利用して操作をする。一応はスマートフォンでも操作できるようにはなっているが、いずれの機種でもあくまでおまけ的な機能だ。ではスマートフォンとの連携がないのか、というとそんなことはなく、欠かせないものではある。

今、中国では有料のコンテンツが目立っている。ドラマやアニメの最新話や、新作の映画などは有料が当たり前だ。以前は版権を購入した正規版コンテンツすらも、正規版推進のため、広告付という形ではあるが無料で見られた。しかし今はお金を払わないと最新のコンテンツは見られない。購入する際は、テレビの画面上でコンテンツを選択した際に表示される支払い用QRコードを、スマートフォンの支付宝(アリペイ)か微信支付(ウィーチャットペイ)で読み取って決済する。

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スマートテレビでオンデマンド視聴。5分だけ無料で見られるが、それ以上見るには料金を支払う必要がある

子どもとランナー用が注目のスマートウォッチ

もう1つのスマート製品の代表格といえば、スマートウォッチだろう。北京、上海、深センといった所得の高い都市では、HUAWEI WATCHやApple Watchなどのスマートウォッチ製品を着用している人を多く見かける。省都クラスの都市になると、王道のスマートウォッチを着用する人はあまり見なくなり、見かけるのは防犯対策機能も兼ねた子供向けのポップなスマートウォッチを着用する小学生や、近年のマラソンブームの中で運動用スマートウォッチを着用する市民ランナーとなる。

中国では子どもの誘拐事件が、割合としては非常に少ないものの、ないことはない。そのため人によっては、下校時刻に小学校の校門前で子どもが学校から出てくるのを待つ。こうした治安面のニーズから、登録したいくつかの電話番号にのみ電話がかけられて、設定した子どもの移動範囲を超えた時には親のスマートフォンに警告の連絡が来るようなスマートウォッチが売られている。こうした子ども向けスマートウォッチは書店やスーパーマーケット、通信事業者のショップなどで売られ、販売コーナーでは親子連れが製品を吟味している。もっとも中には何不自由なく高価なモノを買ってもらえる子どもがApple Watchを自慢げに着用していることもある。類似品としては、老人の徘徊対策のために同様の機能を持つスマートウォッチが作られているが、筆者は着用した人を見たことがない。

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子ども用スマートウォッチ

一方で、活動量などがわかるスポーツ愛好者向けのスマートウォッチは、近年PM2.5による大気汚染が改善するにつれ街中で市民ランナーを見るようになる中、着用者が増えている。特にシャオミ(小米)のスマートウォッチ製品はシェアが高い。また近年ショッピングモールのテナントとして増えてきたデジタル製品ショップでも、さまざまなメーカーのスポーツ用スマートウォッチを見かける。

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ECサイトJD(京東)のリアルショップ「京東之家」ではさまざまなスマート製品が買える

まだマイナーな存在のスマートスピーカー

スマートスピーカーは、アリババ(阿里巴巴)、テンセント(騰訊)、バイドゥ(百度)、JD(京東)、シャオミなど多くのメーカーから出ていて、主にオンラインショップで売られている。筆者はこのうち、BAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)のスマートスピーカーを購入した。

使えば便利だし魅力的、しかも値段も1万円で確実にお釣りがくるので、Amazon EchoやGoogle Homeと比べてもかなりお買い得だ。さらに画面付きのスマートスピーカーことスマートディスプレイも1万円以内でBAT3社から登場している。いずれも手頃な価格だがスピーカーにはこだわっていて、音質も悪くない。

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個人経営のスマートフォンショップで販売されていたバイドゥのスマートディスプレイ

リアルショップではスマートスピーカーが売られているのはシャオミが中国の省都クラスのモールに展開する「小米之家」くらいで、家電量販店やスーパーで取り扱っている店は見たことがない。そのため製品についてニュースや口コミを聞くなど、知っていないと存在に気づくことは難しい。スマートテレビと違って大きくもないのでなかなか目線に入りにくいこともあるだろう。

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アリババのスマートスピーカー「天猫精霊」。vivoのアンテナショップで販売されていたが、リアルショップで見かけることはめったにない

スマートスピーカーを使えば、今日の天気やニュースを聞いたり、音楽を聴いたり、対応家電をコントロールしたりすることができる。対応家電は中国で出回っているたくさんの家電の中のごく一部であり、スマートスピーカーを探す以上に、自分が買いたくなるような家電を見つけるのは困難だ。音楽視聴機能については、BAT3社はそれぞれ音楽配信サービスを抱えているため、版権を持つ音楽や音声による読み聞かせコンテンツを、特に手続きなしで無料で聞くことができる。スピーカーをコントロールするスマートフォンアプリにも音楽プレーヤー機能があり、音楽アプリを使うかのように好きなアーティストの好きな曲をアプリから選択して聞くことができる。もちろん音声コントロールもできるし、音声認識の精度は高いのだが、思い通りの音楽が流れないこともある。それを考えると、アプリで操作してスピーカーとして使うのも実用的で使い勝手がいい。

モールでスマート家電認知を進めるシャオミ

前述の通り、家電メーカー各社のスマート家電を探すのは難しい。唯一スマート家電についてわかりやすく提示しているのがシャオミだ。リアルショップ「小米之家」で、スマートフォンで設定やコントロールができるテレビや炊飯器や空気清浄機などさまざまなスマート家電を展示している。加えてリアル店舗ではスマートホーム化できるキットも販売・展示している。これはスマートフォンで既存の家電の電源のオンオフのコントロールや、各種センサーに反応した場合の挙動の設定ができるようにするというもの。スマートホーム製品はなかなかとっつきにくい面があるが、その認知度の向上に小米之家は努めている。

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モールに出店する小米之家

さらにシャオミはオンラインショップでもエアコンや洗濯機やロボット掃除機といったスマートな白物家電を販売している。シャオミのファンは各種調査結果から男性が多めという結果が出ている。ユーザーの男女比が半々のファーウェイ、あるいは女性ユーザーの比率が高いOPPO、vivoとは対照的だ。まずは、細かく設定を行いたい男性が白物家電をおもちゃのようにスマートフォンアプリからいじり倒すといったところだろうか。

街中でシャオミ以外でよく売られているスマート製品としては、最近では扉に取り付けるスマートロックをよく見かけるようになった。何桁かの番号を押すことで解錠したり、指紋やスマホで解錠するというものだ。スマートロックが突然各社から売り出されたので、あるときこれは何事かと店員に聞いたところ、自宅や小規模オフィスのほか、民泊用の住居に取り付けるニーズがあるのではという。遠方からスマホアプリで解錠用の番号を再設定できるようになると、民泊のセキュリティの不安も手間もなくなるというものだ。

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家電量販店のスマートロック売り場

近年中国の人々のリアルショップでの買い物はどうしてもモールになりがちだが、モール内にはスマート製品を扱う店がいくつもある。詳しい人がインターネットで探さないと見つからないという状況ではなく、一般家庭でも気軽に導入が進んでいるのだ。

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