2019/02/24

【携帯電話研究家・山根康宏が見る、5Gとその先の未来】
CES2019で見えた、5Gが現実となった世界

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香港を拠点とし、世界各地で携帯端末の収集とモバイル事情を研究する携帯電話研究家・ライター。1,500台超の海外携帯端末コレクションを所有する携帯博士として知られるが、最近では通信技術やIoTなど広くICT全般へと関心を広げ、多岐にわたるトピックをカバーしている。『アスキー』『ITmedia』『CNET Japan』『ケータイWatch』などに連載多数。

CESの規模拡大化は止まらない。Eureka Parkには1,000社以上のスタートアップが出展

GSMAも出展、「通信」が存在感を増したCES2019

毎年1月初旬にラスベガスで開催される「CES」は世界最大のエレクトロニクスショーである。ここ数年は2か所の展示会場だけでは出展企業が入りきらず、近隣ホテルのイベントホールも使われるなどその規模は年々拡大している。「Eureka Park」と名付けられたスタートアップ企業専用の出展ゾーンだけでも今年は1,000社以上が出展を行った。

もともとは家電やPC、オーディオ関連企業が出展を行っていたが、規模の拡大とともにその顔触れも変わりつつある。ここ数年はインフォテイメントシステムの搭載や自動運転の実用化の開発を進めている自動車メーカーの出展が急増。展示会場の1つ、ラスベガスコンベンションセンターの「北ホール」はほぼすべてが自動車メーカーで埋め尽くされた。今やトヨタ、BMW、フォード、ヒュンダイなど世界の大手自動車メーカーがCESに出展している。

このように時代の移り変わりとともに様相を変えてきたCESだが、今年の「CES2019」では通信関連技術の展示が目立っていた。アメリカでは2018年9月にベライゾンワイヤレスが世界初のコンシューマー向け5Gサービスを開始したこともあり、CES主催者側も「5G先進国アメリカ」をCES2019の1つの目玉としていた。キーノートスピーチにはそのベライゾンワイヤレスのCEOが登壇した。

まもなくバルセロナでMWCが幕を開けるが、例年1月のCESはテクノロジー関連、2月のMWCは通信ネットワーク関連と、2つのイベントは方向性のすみ分けが自然と行われていた。ところがCES2019にはMWCを主催するGSMAが初めて出展。「高速」「低遅延」「同時多接続」を実現する5Gの商用化により、通信インフラは1つのテクノロジーではなく、人と人に加え「人とモノ」そして「モノとモノ」をつなぐ社会インフラになろうとしている。GSMAもCESの出展企業に対し、IoT/コネクティビティを見据えた製品開発や売り込みをかけるために、MWCへの出展を促したいという考えがあるのだろう。

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スタートアップで目立つIoT関連の展示。これはイタリアのスマートヘルス機器

インフラとして現実のものになる5G

とはいえ「5Gだから見たこともない新たな体験ができる」といった、まったく新しい技術やアプリケーションが展示されていたわけではなかった。それよりも、これまでは概念でしかなかった5Gが実際に目の前で動くリアルなものとしてデモンストレーションされていた。つまり5Gは遠い未来の話ではなく、すでに現実のものになっていることをCES2019の会場では実際に見ることができたのだ。

ベライゾンワイヤレスのキーノートスピーチでは、同社CEOのハンス・ベストベリ(Hans Vestberg)氏が5Gの3つの特性を8つの要素として説明した。ニューヨーク・タイムズやウォルト・ディズニーとのリッチコンテンツ作成のコラボレーションや遠隔医療などはすでに既知のソリューションでもある。だが壇上でベストベリCEOが5Gドローンのコントローラーを操作し、リアルタイムで遠隔地のドローンを飛ばすデモを行ったときは会場が大いに沸いた。後半にはベライゾンの5Gの最初の顧客とビデオ通話をつなぎ、同氏の自宅での高速通信環境を見せてくれた。残念ながら同顧客宅の通信速度はギガビットには届かず690Mbpsだったが、むしろそれがリアル感を十分に出していた。

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CES2019キーノートスピーチに登壇したベライゾンのベストベリCEO

通信事業者では他にも2019年に5Gを開始する予定のT-Mobileが600MHzの低い周波数帯を使った5Gビデオ通話のデモを行った。ボーダフォングループは「同時多接続」のデモとしてNB-IoTによるスマートパーキングソリューションを展示。どちらもウエストゲートホテル内に設置されたスマートシティゾーンへ出展しており、次世代通信技術が都市のスマート化を加速するデモを見せていた。

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ボーダフォンのNB-IoTソリューション

もちろんクアルコムやインテルといった、5Gの主力プレーヤーも出展を行った。クアルコムは5Gモデム搭載スマートフォンのリファレンスモデルを使った4Kビデオ受信のデモや、AR/VRを使った5Gの疑似体験。インテルは5G環境下でのクラウドゲーム環境を展示するなど、一般消費者に5Gがもたらす新しい体験をデモしていた。

そして家電メーカーも5Gへの対応を見据えた製品発表会を行ったのがCES2019の特徴だった。例年は大型TVや最新デザインの白物家電を真っ先に発表していた各社のプレスカンファレンスが今年は様変わりし、プレゼンの最初に5Gへの取り組みを説明する企業が増えていたのだ。LGエレクトロニクスは5Gスマートフォンの話題から始め、サムスン電子も「IoT、5G、AI」を製品開発の3つの柱にすると説明した。

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CES2019では家電メーカーも「5G」をキーワードに新製品発表会を行った。写真はLGエレクトロニクスの発表会

家電各社はTVや家電のスマート化を進めているが、スマート家電はまだまだコンシューマー向けの一般製品にはなっていない。むしろ後から登場したスマートスピーカーが普及速度では上回っている。家電の5G対応はまだまだ先になるだろうが、「つながっていること」を感じさせない5G技術はスマート家電の普及に欠かせないテクノロジーとなるのは間違いないだろう。

「移動」を変える新たな自動車

さてCESで大きな存在感を示す自動車メーカーの中でも、新興勢の力が無視できなくなりつつある。自動車業界ではテスラが風雲児のごとく現れ、車のインテリジェンス化を一気に進めた。そして今や中国の新興自動車メーカーがそのテスラ以上の存在になろうとしている。それがバイトン(Byton)だ。

バイトンはCES2019で自動運転レベル4対応のEV「M-Byte」を2019年末に生産開始すると発表した。M-Byteはダッシュボードに48インチの大型ディスプレイが埋め込まれており、走行速度や電池残量など車の基本情報やナビゲーションが表示される。また助手席側ではビデオが再生されるなどインフォテイメントにも対応する。もちろん4Gの通信モデムを内蔵しているが、5Gへの対応も予定されている。M-Byteは自動車というよりも「走るディスプレイ」ともいえる製品なのである。

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バイトンのM-Byte。巨大なモニターが搭載されている

自動運転の実現には低遅延性に優れた5Gの利用が必須だが、5Gの高速な通信速度を活かし車内のコンテンツ体験までも豊かなものにする、そして車の移動中という(特に運転者にとっては)これまで有効活用できなかった時間を有意義なものに変えていく、それがバイトンの自動車開発のフィロソフィーなのである。

この自動運転関連では個人の自家用車だけではなく、都市内の移動に使われる「シャトル」やモノを運ぶ「デリバリー」向けのソリューションの展示も目立った。シャトルは数人乗りの小型バスで、車内のモニターでは乗客それぞれに応じた情報配信ができる。パナソニックやボッシュなどがデモを行っており、ヤマハも乗客の顔認証を組み込んだシャトルを展示会場内のブース移動に使っていた。中国の美団点評(メイトゥアン・ディエンピン)はスマートフォンで注文した商品を自宅まで届ける小型デリバリー車をデモし、これも顔により受領時の認証を行う。5Gが普及すればこれらのコンセプト自動車は当たり前のように使われるようになるだろう。

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ボッシュの自動運転シャトル

折りたたみ型で生まれるスマートフォンの新たな可能性

最後にロヨル(Royole)が大々的に展示していたスマートフォン「FlexPai」を紹介しよう。2018年10月に発表した世界初の折りたたみ型ディスプレイ搭載スマートフォンで、開くと7.8インチディスプレイのタブレットになり、真ん中から折り曲げると半分サイズのスマートフォンになる。タブレットとスマートフォンを融合させた製品であり、現在は4Gに対応する。このFlexPaiが5Gに対応すれば、普段スマートフォンとして使いながら、5G回線で配信される高画質なストリーミング配信動画を見たくなった時には本体を開いて大画面で視聴すことができる。

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世界初の折りたたみ型スマートフォン、FlexPai

5Gの普及とともに都市のスマート化が進めばスマートな移動ソリューションが多数登場し、朝の通勤通学時も満員電車にゆられ辛い時間を過ごすこともなくなるだろう。FlexPaiを持っていれば、ちょっとした空き時間にはスマートフォンを使い、電車で着席したときには画面を開いてタブレットスタイルで高画質な動画配信を見る。そんな未来のライフスタイルが折りたたみ型スマートフォンから見えてきたのだ。折りたたみ型スマートフォンは先日サムスンも製品を発表し、ファーウェイもMWCでこれに続くと見られている。

5GはMWC2019ではメインのトピックとなる。CESで見えてきた「5Gの世界」をどうやって実現し、さらに発展させていくのか。5G関連の技術やソリューション、そしてその先の新しいアイディアを、MWC2019では数多く見ることができるだろう。

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