2019/06/05

コネクテッドカーは高級車にとって何を意味するのか? アストンマーティンCMOに聞く、同社が目指す自動運転と5Gの可能性

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今年5月のフォーミュラEモナコePrixに先立って同市内でお披露目された、アシュトンマーティン初の完全電気自動車ラピードE(Photo: Aston Martin Lagonda)

By Linda Xu from WinWin

5Gは自動運転の実現を加速する。あらゆる場所で完全な自律走行ができるL5は2030年までに実現すると見られており、ガートナーの予測では、場所を限定したL4が普及するようになる2025年には自動運転車がクラウドに送信するセンサーと車体に関するデータ量は1か月あたり1 TB(テラバイト)に達するとされる。アストンマーティン・ラゴンダのバイスプレジデント兼CMO(最高マーケティング責任者)、サイモン・スプロウル(Simon Sproule)氏はこうしたデータのやりとりについて、「安全性・接続性の確保や車内エンターテイメントのために自動運転車やそのユーザーが生成する莫大な量のデータを扱うには、5Gネットワークがきわめて重要な役割を果たすでしょう」と述べる。

新たに登場するさまざまな技術を原動力に地殻変動が起きつつある自動車産業において、5G時代の発展のカギを握るのは、自動車メーカーとテクノロジー企業のインタラクションだ。

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アストンマーティン・ラゴンダ バイスプレジデント兼CMO サイモン・スプロウル氏

デトロイト・ミーツ・シリコンバレー
自動車メーカーとテクノロジー企業のパートナーシップ

わずか1ミリ秒の低遅延と大量のデータ処理を実現する5Gは、セルラーV2X(C-V2X)のようなミッションクリティカルな機能に欠かせないものとなる。スマートで接続された自律走行の実現には、障害に強く堅牢であらゆる場所まで張りめぐらされた無線ネットワークによって、広範なカバレッジと高速通信、超低遅延、超高信頼性を提供する必要がある。

5Gの大容量・低遅延によって、接続プラットフォームが「自動車業界の変革を促すあらゆることを可能にするようになる」とスプロウル氏は言う。業界で起きている変化の要因として、同氏はネットワーク接続、自律走行、電動化、シェアモビリティの4つを挙げる。「今我々が目にしているのは、言うなれば『デトロイト・ミーツ・シリコンバレー』。自動車メーカーとテクノロジー企業が協力し始めているのです。10年前には想像もできなかったような新たなパートナーシップが生まれています」

スプロウル氏は自動車を、テクノロジーで強化され、ネットワークに接続されたモバイルデバイスとみなしている。「そんなものが本当に実現するのか? という段階はもう過ぎました。いまや焦点は、テクノロジー企業は自動車業界で何ができるのか、自動車メーカーは既存のアセットをどう守れるのか、というところにあるのです。業界は非常におもしろい時期を迎えています」

C-V2Xの発展を推進する企業コンソーシアムでファーウェイも創設メンバーとなっている5Gオートモーティブアソシエーション(5GAA)のような組織では、未来のモビリティと交通サービスに向けたエンドツーエンドのソリューションをすでに提供し始めている。アストンマーティンはこれまで数年にわたり、同じく5GAA創設メンバーであるダイムラーと技術提携を結んできた。これによってアストンマーティンは、高級車メーカーには自社だけでは入手できないようなリソースを得ることができている。これは業界がテクノロジーによってこれほど広範な進化を遂げようとしているとき、きわめて価値のあることだ。

自律走行は運転の楽しみと両立するか?

自動車メーカーは、コネクテッドカーサービスは大衆車から高級車まですべての車種に提供することになるが、スプロウル氏は「興味深いのは、高級車と大衆車で使われるコネクテッドカー技術がそれぞれどう異なるかという点です」と語る。

「当社が販売しているのは、必要だから買うのではなく、欲しいから買うというタイプの車です。では、こうした最上級の高級車にとって、自律走行はどんなものになるのか? 我々は今これを自問しています」

アストンマーティンのスポーツカーが提供する価値の中核となるのは、ドライバーが運転の楽しみを味わえることにある。そのため、主要な運転支援や安全確保を超えてテクノロジー、とりわけ自律走行技術を取り入れることは、同社の哲学に反してしまう可能性がある。「我々はアストンマーティンが完全自律走行のリーダーになるとは考えていません。自分で運転してみたいと思って当社のスポーツカーを買っていただくお客様の意図をないがしろにしてしまいかねないからです」

自律走行は運転を楽しむ体験とは本来相いれないが、例外はあるとスプロウル氏は言う。「レース場で自動運転車が最適な走行ルートを示してくれるとしたらどうでしょうか? 自律走行は安全や渋滞時のストレス緩和などに価値を発揮しますが、高級車においては別の利点ももたらしてくれます。つまり、運転体験をより高めることもできるのです」

一方、アストンマーティンにはラゴンダ(Lagonda)ブランドもある。2018年5月、同社は「ラディカルで新たな定義をもたらすゼロエミッションSUV」というラゴンダのコンセプトを発表。その狙いは「これまでにない、超スタイリッシュで最高にラグジュアリーな、ゼロエミッションの完全な電気自動車」によって同社のリーダーシップを強化することだという。

「ラゴンダは自律走行においてリーダーに位置づけられうる車だと考えています」とスプロウル氏は述べる。ドライバーによる運転よりもラグジュアリーに重点を置いたラゴンダは、いずれ運転手付きの車の代わりになるかもしれない。「二酸化炭素を排出する車を運転手に運転してもらわなくても、自律走行というデジタルな運転手に運転を任せればいいのです」

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今年3月のジュネーブモーターショーで発表したラゴンダ・オールテレーン・コンセプトは、2022年に生産開始を予定(Photo: Aston Martin Lagonda)

電気自動車はアストンマーティンの将来にとって重要な役割を果たす。同社は2018年、英国ウェールズのセントアサン(St. Athan)に電動化の拠点となる工場を開設した。同社初の完全電気自動車ラピードE(Rapide E)は、2020年の生産開始を予定している。スプロウル氏によれば「アストンマーティンにふさわしいパフォーマンスを発揮する、きわめて魅力的な電気自動車」となる見込みだそうだ。

自動車業界独自の課題
10年後の消費者にとっても魅力的な車を

自動車業界には、テクノロジー業界にはない独自の課題も山積している。最も顕著なのは、タイムトゥマーケット(市場に投入するまでにかかる時間)だ。昨年11月にロンドンで開催されたファーウェイのグローバルモバイルブロードバンドフォーラム2018における基調講演でスプロウル氏は、テクノロジーのおかげで自動車の生産サイクルは短縮されたものの、新たな車種の設計、テスト、生産にかかる時間はいまだに年単位だと述べている。現在自動車の設計は複雑化しており、将来の顧客ニーズを見据えてより洗練されたデザインにする必要があること、また政府による安全性のテスト要件が厳しくなっていることで、新モデルが設計図から工場での生産にたどりつくまでには3~4年はかかるのだという。

これとは対照的に、エレクトロニクスの開発は迅速で、市場に出たあとにもアップデートされ、買い替えサイクルも短い。新たなテクノロジーが急速に展開され、普及するのだ。

アストンマーティンのような高級車においては、中古市場も盛況だ。つまり、普通ならとっくに廃車になっているような古い車でも、大半がきちんと手入れをされてクラシックカーとして流通するのである。そのため、設計には10年単位の使用を考慮しなければならず、「クラシック」であるからには最先端の技術は必要ないのだが、それでもちゃんと乗り続けられる車にしなくてはならない。車の平均的な寿命は10~15年。したがって、自動車メーカーはコネクテッドカーを設計するにあたり、その機能を発売時に魅力あるものにするだけでなく、寿命に達するまで使えるものにしなければならないのだ。

「今日開発した車は、10年後の消費者にとっても魅力的で使いやすくなければなりません。ですから、テクノロジーは車を常にアップデートし、技術的に使えるものにしておくためにもますます重要な役目を果たすことになるでしょう」とスプロウル氏は語る。

そのためには、例えば販売後もネットワークを介してアップデートできるソフトウェアプラットフォームの採用や、ライフサイクルの長い接続プラットフォームへの対応などが必要になってくる。

もう1つの課題は、新たなテクノロジーに対する顧客の認知度や需要が最初のうちは低く、その後急速に高まっていくという状況で、そうしたテクノロジーの採用をどう計画していくかという点だとスプロウル氏は言う。「消費者が何を考えているのかをつかまなければならない一方、消費者自身も何が欲しいかはわかっていないことが多いのです」

自動車メーカーは5Gに対応していかなければ、V2Xの進展を活用することはできないだろう。自動運転の実現に後れを取る可能性もある。どんな業界でも、革新的なイノベーションを取り入れなければ競争に乗り遅れてしまう、というタイミングが必ず来る。自動車メーカーと5G技術にとっては、今こそがそのタイミングなのだ。

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