2019/06/28

屏風や壁紙、学生服からカフェ経営まで 国産ジーンズの雄「桃太郎ジーンズ」の進化し続ける挑戦

大阪の企画・編集会社、株式会社glassのスタッフ。地域情報を日々取材して回りながら、新たなトレンドや活気のあるコンテンツに注目する。

ジャパンブルーが開発した新素材「シン・デニム」。異業種とのコラボにより、衣服だけでなく畳やソファなどさまざまな製品に活用されている

ジーンズの聖地と呼ばれ、観光客も多く訪れる瀬戸内の港町、岡山県倉敷市児島。この児島で誕生した「桃太郎ジーンズ」等のブランドを運営する株式会社 ジャパンブルーは国産ジーンズを核としたこれまでのテキスタイル事業、アパレル事業の枠にとらわれない新たな挑戦をし続けている。

ジャパンブルーの事業の拠点となる児島は、江戸時代初期の干拓による新田開発が行われていた地だ。そのため塩分を含む新田や気候など、綿花の栽培に適した場所として繊維産業が盛んな町へと発展した。生産量全国1位の学生服をはじめ作業服や帆布、また1960年代に国内で最初にジーンズの生産を手がけた国産ジーンズ発祥の地である。この繊維の町で、「ものづくりの本質を追求したジーンズを」と立ち上がったのが、ジャパンブルー代表の真鍋寿男氏である。

1954年、倉敷市に生まれた真鍋氏は商業高校を卒業後倉敷市役所に就職。公務員として働きながら画家に師事していた時期もあったという。市役所を退職し家業の造園業を行っていたが、織物の奥深さに惹かれテキスタイル業界へ飛び込んだ。その頃、藍染に没頭したことをきっかけにデニムを中心としたテキスタイル会社の設立に踏み込む。

素材感・着用感にこだわる児島発の国産ジーンズ

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今回お話をうかがったジャパンブルー広報の木村克也氏

1990年代後半、アメリカのアパレルメーカー・リーバイスの「501xx」ジーンズの古着が大流行したことで国内のヴィンテージジーンズブームに火が着いた。日本のアパレル事業の関係者がこぞって渡米し、古着屋で買い付けを行い輸入して高値で販売していた。だが、多くの人が買い求め、かつ古着と言うこともあり販売できる数量には限りがあった。こうして2000年代前半に訪れたのがレプリカブームだった。昔の生地の風合いによく似たデニムを仕入れ、リーバイスにそっくりなシルエットに仕立てヴィンテージ加工を施したジーンズが出回り始める。その頃、デニムの素材を販売していたのが当時テキスタイル事業を行っていた株式会社コレクト、現在のジャパンブルーである。

「当時のジーンズ業界はリーバイスのジーンズがマスターピースとなっており、それに追いつくことを目的にものづくりを行っているジーンズメーカーがほとんどでした。そんな業界の現状に真鍋は違和感を覚え、ものづくりの本質に迫るよう商品を制作したいという思いから、看板ブランドとなる桃太郎ジーンズを2006年に立ち上げたんです。桃太郎ジーンズは素材感や着用感を重視し、国産生地、縫製にこだわってつくられました。また、繊維の町である児島という産地の地なりを活かし、産地をPRするという意味合いも兼ねて、地産の素材と地元の工場が作る本当の意味での産地ブランドとして、岡山を連想させる桃太郎の名前を掲げたブランド名を採用しました。しかし、全国販売を開始したもののすでにヴィンテージジーンズのブームは過ぎ去っており、認知されるには時間がかかったそうです」(ジャパンブルー広報担当・木村克也氏)

だが、チャンスは訪れた。2007年にJR西日本が行うイベントのデスティネーションキャンペーンがあり、倉敷市が取り上げられることになったのだ。キャンペーンに使用された観光PR のポスターには桃太郎ジーンズの店舗写真が大きく掲げられ、JRの管轄である各駅構内に張り出され多くの人の目に止まった。それが大きなきっかけとなり、国産ジーンズ発祥の地である児島と桃太郎ジーンズの名前が口コミで徐々に広がっていくこととなる。このキャンペーンをきっかけに、2009年には真鍋氏が立役者となることで、倉敷の観光名所の一つである「児島ジーンズストリート」が誕生、児島のものづくりが地域の観光活性化に多大な影響を与えたのである。

国産ジーンズが“良質”といわれるわけ

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桃太郎ジーンズの主力商品である銅丹(左)と出陣(右)

桃太郎ジーンズには複数のレーベルがあり、一番最初に展開されたのが「銅丹」。股上が深いシルエットで履き心地はいいが、買い手に訴えるようなアイコンが少ないという課題があった。ユーザーからも、目で見て桃太郎ジーンズだとわかるようなアイテムが欲しいという声があったため、内股のステッチ色を金茶からピンクに変更。バックポケットに桃の丸みを連想させるようなステッチ、通称「桃尻ステッチ」を施し、現在のデザインに。そして、もう一つの看板商品は、売り上げ数でブランド内ナンバー1の「出陣」。バックポケットにペイントされる二本の線は通称「ジャパンライン」と言われ、桃太郎が鬼退治に向かう際に掲げたのぼり旗の引両紋がイメージされている。このペイントは職人が一本一本手作業で描いており、摩擦や洗濯で少しずつ色が掠れていく。デニムの色落ちやこすれなどとともに、ジャパンラインの表情の変化も楽しめるのだ。

「それまで海外で生産されていたジーンズと、真鍋がこだわる国産ジーンズには大きな違いがありました。それは縫製や生地です。初めて児島で国産ジーンズが作られた1960年代は、分厚くて硬いデニムを仕立てる技術が浸透していなかったのです。しかし、同地にはデニム同様に厚手で硬い帆布を扱える職人やそれを仕立てる工場はある。ならば同じように扱えるのではないか――とつくられたのが国産ジーンズの始まり。そこに加わったのが日本人の職人気質です。同じジーンズをつくるのであれば、従来のものよりも丁寧に裁断、縫製することを目指すべきと、試行錯誤を重ねジーンズをカスタマイズしていきました」(同)

しかしジーンズはもともとワーキングウェアというだけあって、やはりどれだけクオリティを上げても硬さやごわつきは残っていた。ジャパンブルーはそこに目を付け、改良のため生地に使用する素材をすべて見直す。光沢がありしっとりとした肌触りのいい高級コットン「ジンバブエ・コットン」100%で作った生地を市場に出したのだ。これまでの生地に比べると、高級コットンを使用したため価格がかなり上がってしまい、「そんなもの高くて売れない」という声も多かったという。だが、その生地はヨーロッパのメゾン(ファッション業界)の関係者の目に留まり、いわいるハイブランドの製品に使用されることに。このことをきっかけに日本産のデニムは“ハイクオリティ”というお墨付きを獲得。以後、その素材をジーンズにも転用し、販売価格2万~3万円のプレミアムジーンズというカテゴリーが誕生したのだった。

新たなテキスタイル「シン・デニム」でデニムの可能性を広げる

ジーンズで成功したジャパンブルーだが、同社のテキスタイル部門は機能性素材の開発も行うようになり、他メーカーにはない自社ならではの付加価値を研究し続けていた。商品はもちろん、生地の段階で高機能かつ付加機能をつけることを考案していたのだ。そんななか、地元の高校からデニムを使用した学生服の制作依頼が舞い込む。このデニム学生服こそ、「シン・デニム」開発の扉であった。だが、学生服である以上、デニムの特徴かつ醍醐味である破れや色落ちは禁物という条件がつく。依頼から研究を重ね、翌年にようやく課題をすべてクリアした素材シン・デニムの開発に成功したのだ。

「シン・デニムの大きな特徴は染料と素材が従来のものと異なること。デニムのステータスである、色落ちを楽しむ要因のインディゴ染料を使用せず、独自に開発した染色技術を用いて青を表現しています。また、生地自体もコットン100%だと擦れに弱いためポリエステルを絶妙な割合で混ぜ込み、バランスをとっています。この2点をうまく融合させたことで従来のデニムよりも堅牢度がワンランク高いシン・デニムが誕生し、2017年より学生服に採用されたのです」(同)

ここからシン・デニムの活用が広がり、さまざまな業種との共同開発もスタートしていった。現在まで屏風(歴清社)や畳(西中織物)、壁紙(トキワ産業)、建具(木村家)、ビジネスユニフォーム(日本被服)、ベッド(ドリームベッド)、レディースユニフォーム(ジョア)などのコラボ製品を制作してきた。

「主に衣料に使われるデニムにとって、異業種とのコラボにはさまざまな条件があります。例えば、デニム壁紙の場合は準不燃の防火認定を受ける必要があり、デニム畳は撥水加工を施さねばならない。異業種とのコラボによって、その業種、用途に沿ったルールをひとつひとつクリアすることで今後の幅広い分野での実用化が見込まれ、さらにシン・デニムの価値が高まっていくと考えています」(同)

衣・食・住にデニムがある「+DENIM」を提唱

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4月にオープンしたサロンドデニムの店内
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シン・デニムを使用したコーヒー豆のパッケージは使用後に再利用も可能

ジャパンブルーの躍進はアパレル産業だけにとどまらない、2019年4月にはデニムのコンセプトショップであるカフェ「SALON DE DENIM(サロンドデニム)」を児島ジーンズストリートにオープン。コーヒー豆のパッケージやカフェカウンター、スタッフエプロンにシン・デニムを使用した。コーヒーづくりにもデニムと相似的なクラフトマンシップがあると見込み、オープンへ踏み込んだという。店では、東京代官山に店を構えるコーヒースタンド「カフェ ファソン」監修のもと、オリジナルブレンドコーヒーを提供する。また、同様のコーヒーを使用した「コーヒージェラート」も販売しており、こちらは2015年のミラノ万博「The World Trophy of Pastry Ice Cream and Chocolate」(ケーキ、チョコレート、アイスクリームの世界大会)でグランプリを受賞した神奈川県大和市のパティスリー「メゾン ジブレー」の江森シェフ考案によるメニュー。このような名店とのコラボにも注目が集まっている。

シン・デニムを活用した飲食事業を始めたことにはもうひとつ理由があった。それは、生活の基盤である衣・食・住にデニムを加えた「+DENIM(プラスデニム)」というコンセプトだ。生活の傍らにデニムがあり、さまざまなきっかけによってジーンズに対する興味を呼び起こせるようにという、真鍋氏率いるジャパンブルーのものづくりに対する想いだ。さらに2019年2月に行った記者会見では、国内サプライチェーン5社と手を組みライフスタイル分野の市場開拓を本格化すると発表した。枠にとらわれないジャパンブルーのものづくり。その創造力はこれからも止まることはないだろう。

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