2019/04/06

【ソーシャルテクノロジー最前線】
多様な機能で社会貢献活動をサポートするNPO向け資金調達ソフトウェア

フリー・ジャーナリスト。上智大学外国語学部ドイツ語学科卒業。フルブライト奨学金(ジャーナリスト・プログラム)を得て、1996年から2年間、スタンフォード大学コンピューター・サイエンス学部にて客員研究員。当時盛り上がりを見せていたシリコンバレー・テクノロジー産業のダイナミズムに魅了される。現在、シリコンバレー在住。テクノロジー、ビジネスのほか、社会、文化、時事問題など、幅広く取材。ネットと社会の変貌を追い続けている一方、建築やデザインも大きな関心の対象。

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互いに成長を促進する
NPOと資金調達ソフトウェア

「ノンプロフィット・ファンドレイジング・ソフトウェア」という表現を聞かれたことはあるだろうか。

これは、社会貢献を行うことを目的とした非営利組織(NPO)が、活動資金を集めるために利用できるソフトウェアのことだ。NPOは、その目的に共鳴する財団や企業、個人から寄付金を集めて活動を行っていることがほとんどで、これまでは個人的なつながりや社会責任に意識的な企業に働きかける、あるいは財団へ申し込むなどして活動資金を集めていた。

ところが、インターネットによってその資金調達方法に多様性が生まれている。ノンプロフィット・ファンドレイジング・ソフトウェア(NPO向け資金調達ソフトウェア)が多く登場したからである。実はこうしたソフトウェアは単独で市場を形成するほど大きなものとなっており、今後ますます成長すると予想されている。これまでよく知られている組織だけではなく、NPOの数が増え、その目的や活動内容が拡大しているうえ、規模も中小さまざまになり、それぞれの必要性に応じたソフトウェアが求められるようになっているからである。

ざっと知られるだけで、このカテゴリーに属するソフトウェアには、CiviCRMGlobalGivingKivaAplosQgivSalsaFundlyWeFunderNeonCRMGoFundMeDonorsChooseDonatelyOneCauseSnowballKindfulDouble the DonationBlackbaudMemberClicksGrowthZoneDonorViewGiveGabなどがある。

ある意味では、NPOが多様化したからこうしたソフトウェアが増えたこともあるだろうが、逆にこの手のソフトウェアの存在によって、これまでならば陽の目を見ることのなかったアイデアが資金を得ることが可能になり、NPOとして活動を展開していくことができるようになったとも言える。いわば、社会貢献の活動とNPO向け資金調達ソフトウェアは互いの成長動力になっているというわけだ。

クラウドファンディングから寄付者管理、会計・税務まで
NPOを支える多様なソフトウェア

NPO向け資金調達ソフトウェアの種類もいろいろある。自体がそうしたソフトウェアとして知られるファンドリー(Fundly)が「資金調達のソフトウェア: NPOが知っておくべき11タイプ」というブログを公開している。それによると、NPOは以下のようなソフトウェアを使いこなすことが求められるという。資金調達用のものもあるが、それを超えて活動を維持していくためのソフトウェアも含まれている。

1. クラウドファンディング・ソフトウェア
スタートアップや新たなプロジェクトのための資金集めのプラットフォームとして知られるが、NPOに特化したものも多い。不特定多数の人々から資金を集めることが可能で、それぞれが少額であっても集合的には十分な活動資金が集まることもあるのが利点。活動目的をストーリーとしてアピールし、サポーターのコミュニティを作ることができる。期間を限定して資金調達を行うため、火急のメッセージが伝わる。

2. CRM(顧客関係管理)と寄付者管理のデータベース・ソフトウェア
寄付者や関係者のプロフィールを管理し、コミュニケーションを遂行するためのソフトウェア。企業で用いられるものがNPO用にも開発されている。寄付者や潜在的な寄付者との関係を維持して追跡したり、イベントを管理したりできる。

3. P2P寄付金調達ソフトウェア
クラウドファンディングに似ているが、NPO自体が管理し寄付金を直接得る。イベント開催に際して寄付金調達を行うことも多く、目標資金が集まった場合にだけ開催するなどのゴールを明確にコミュニケートすることができる。

4. テキストメッセージを利用した寄付ソフトウェア
携帯電話のテキストメッセージ機能を利用して、簡単に寄付が行えるようにしたもの。特定の番号宛てに寄付金額を記したテキストを送信すると、メールでリンクを受信して送金を確認できる。寄付を初めて行う場合は、クレジットカード情報などの入力を求められる。

5. オークション・ソフトウェア
チャリティ用のオークションをオンラインで開催する際に利用。開催告知、出展、モバイルによるオークション参加、配達管理、分析などの機能を含む。

6. マッチングギフト・ソフトウェア
マッチングギフトとは、例えば企業が社員による寄付総額と同額を上乗せして寄付に参加すること。このソフトウェアによってNPOはサポーターの社員にどんなマッチングギフトを雇用主の企業が準備しているかを知らせ、寄付状況と企業のマッチングギフトを結びつけることができる。

7. 教会向け寄付ソフトウェア
教会が信者の寄付を管理するために利用できるソフトウェア。教会の管理システムにも統合可能。

8. 支払い処理ソフトウェア
寄付を受け取るNPOが、クレジットカード情報などを管理して寄付金の支払い処理を行う。

9. 会計ソフトウェア
寄付金などの収入と支出を管理する。会計報告義務との整合性も確認できる。

10. 税金申告用ソフトウェア
NPOが法律に即して税金申告ができるように作られたオンライン税金申告ソフトウェア。

11. 寄付金調達用ハードウェア
イベントなどの現場で寄付金を受け付けるためのハードウェア。現金受け取りやクレジットカード処理を管理するPOS機器やタブレット機器などに装着するデバイスがある。CRMとの統合も可能。

このように見ると、NPOが利用するソフトウェア(とハードウェア)の多様さに驚かされる。同時にそうしたソフトウェアを開発する多くのディベロッパーの存在も感じられて、この分野が立派なテクノロジー業界の一部として成り立っているのが実感できる。

それぞれに特色あるプラットフォーム
オープンな仕組みから来るリスクも

さて、具体的に個々のソフトウェアはどのような仕組みになっているのだろうか。いくつかの例を挙げてみたい。

上述したファンドリーは、2009年に創設された資金調達のプラットフォームで、教育や医療、NPOなどの利用に特化したソフトウェアを開発している。選挙資金を得るためにも利用され、イーベイやHPのトップを務めたメグ・ホイットマンがカリフォルニア州知事に立候補した際にこれを通じて資金を集めたことでも知られる。

仕組みはクラウドファンディングのサイトと似ているが、目的がまったく異なる。災害援助、動物愛護、NPOへの寄付などの他に、家族のガン治療のための医療費集め、アーティストの活動を支援するといったものも含まれ、何のための寄付なのかが多岐にわたる。起業のクラウドファンディングと違って、集まった寄付金が目標額に満たなくても引き出せる。

寄付を募るページのデザインはカスタマイズが可能で、フェイスブックなどでのシェアも簡単にできるようになっていたり、寄付があると通知が届いたりするなど、細やかな配慮が見られる。

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ファンドリー上でのクラウドファンディング。SNSでのシェアがしやすくなっている

ドーナーズチューズ(DonorsChoose.org)は、学校の授業で必要な教材を買うための資金を募ることに特化したサイトだ。2000年にニューヨークの高校教師が創設した。アメリカでは、公立学校での教育費削減が大きな社会問題になっており、ただでさえ給料の低い先生たちが自腹を切って教材を買ったといったような話をよく耳にする。

ドーナーズチューズは、こうした教師らが教材の必要性やプロジェクトの内容を訴えて、広く世界から資金を集められる仕組みである。起業などとは異なり、100ドル程度の寄付を求めるものが多く、一人あたりの寄付金も少額で済むのが特徴だ。

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教材の購入や学校設備用の資金調達に特化したドーナーズチューズ。比較的少額の募集が多い

キヴァ(Kiva)は、こうしたプラットフォームの中でもかなり先駆的な存在だ。厳密にはキヴァはNPO向けではなく、世界中の起業家が活動資金を借り入れるためのローン資金をクラウドファンディングで募るというもの。主に発展途上国で資金のない起業家が先進国から資金を集め、ビジネスが成功した暁にはローンを返済する。基本的な金融の仕組みと言えるが、インターネットとソフトウェアのおかげで途上国と先進国の個々人を結ぶことが可能になり、しかも営利的な金の貸し借りを仲介するのがNPOというこれまでにない構図だ。

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キヴァは寄付ではなくマイクロファイナンスをオンラインで行う仕組み

こうした寄付金調達のプラットフォームに掲載されているものには、詐欺まがいのプロジェクトも含まれることが知られている。認定を受けたNPOのみが利用できるよう認定書類の提出を義務づけている場合もあるものの、多くのサービスはオープンなだけに、誰でも寄付ができると同時に誰でも資金を募ることが可能だ。共鳴する熱意と冷静な判断力が必要とされる。

だが、こうしたソフトウェアがこれまでにない可能性を社会貢献に与えていることは間違いない事実なのだ。

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