2019/03/28

【携帯電話研究家・山根康宏が見る、5Gとその先の未来】
動画が見られる冷蔵庫や音声で操作できるエアコン……コネクテッド化が進む中国最新家電

香港を拠点とし、世界各地で携帯端末の収集とモバイル事情を研究する携帯電話研究家・ライター。1,500台超の海外携帯端末コレクションを所有する携帯博士として知られるが、最近では通信技術やIoTなど広くICT全般へと関心を広げ、多岐にわたるトピックをカバーしている。『アスキー』『ITmedia』『CNET Japan』『ケータイWatch』などに連載多数。

上海で開催されたAWE2019

人と人、モノとモノをつなぐ時代から「オールコネクテッド」へ。2019年2月末にスペイン・バルセロナで開催されたMWC19 Barcelonaでは、各国で今年から本格的にサービスが開始される5Gのデモやアプリケーションが数多く展示されていた。では世の中は今、どれくらいのモノがネットにつながり人々の生活をサポートしているのだろう? その実例を中国最大の家電展示会で見ることができた。

冷蔵庫でTikTokを視聴
すべてがネットにつながる中国最新家電

中国・上海で毎年3月に開催されるAWE(Appliance&electronics World Expo)は主催団体が「CES(1月・ラスベガス)、IFA(9月・ベルリン)とならぶ世界3大家電ショー」と謳う、中国でも最大規模の家電の展示会だ。出展する顔ぶれもハイアール、ハイセンス、メイダ(美的)、グリー(格力)など中国大手からソニー、サムスン、シーメンスなど先進国企業、さらにはファーウェイ、JD.com(京東)などの非家電企業を加えると900社近くに達する。各社の製品はグローバル向けだけではなく中国国内市場を意識したものが多い。

3月13~16日に開催された今年の「AWE2019」は30万人を超える来場者を集めた。各社はこれから発売する予定の新製品や開発中の次世代家電を競い合うように展示しており、AWE2019は中国の家電のこれからを知るにはうってつけのイベントだった。TV、冷蔵庫、洗濯機、空気清浄機などの一般家電から、大型温水器や大規模浄水器、大気汚染センサーなど中国ならではの製品も多く見られた。

それらの展示の中で目を引いたのはスマート冷蔵庫だ。スマート冷蔵庫とはネットアクセス可能な冷蔵庫であり、扉の部分にタッチパネル式のディスプレイを内蔵し、Android OSなどで動作する。この手の製品は数年前からいくつかのメーカーが製品化していたが、ディスプレイ部分の品質が悪く実用性に乏しいものも多かった。

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扉部分にネット接続可能なディスプレイを取り付けたコンカ(康佳)のスマート冷蔵庫

ところがスマート冷蔵庫の2019年モデルはこのまま先進国で販売しても消費者に受け入れられると思われるような性能・機能を有した製品が多数展示されていたのだ。ディスプレイのタッチ感度は市販のタブレットと変わらず、Wi-Fi接続によるネットアクセスもストレスなく行えた。冷蔵庫は飲料や食料を取りに一日何度も足を運ぶ「家庭に必須」の製品だ。その冷蔵庫に立ち寄った時に、扉のディスプレイを使って情報収集やコミュニケーションを図ることができれば、日々の生活もより便利になるに違いない。そう考えて家電メーカー各社はスマート冷蔵庫の開発に躍起になっている。

スマート冷蔵庫のディスプレイでできることは各社とも似通っており、カレンダーを表示させたりメモを書いて家族に通知したりするほか、レシピ検索やブラウザ・アプリを使ったオンラインショッピングも可能だ。冷蔵庫の中を見てケチャップがなければその場ですぐにネットで注文する、なんてことができるというわけだ。しかしそれだけの機能であれば、用事がない限り冷蔵庫の前に立ち止まる時間は短くなってしまう。スマート冷蔵庫は食品を保存するだけではなく、情報を提供するデジタルツールだ。利用時間を増やせば新たなビジネスチャンスを生むこともできるはずだ。

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チャンホン(長虹)のスマート冷蔵庫。レシピ検索もお手のもの

その一例がスマート冷蔵庫への動画サービスアプリの搭載だ。冷蔵庫を使うちょっとした時間に、ディスプレイにタッチして短編動画を見てもらおうというのである。例えばスカイワース(Skyworth)のスマート冷蔵庫にはショートムービーサービスで有名な「TikTok」(中国語名は「抖音」)アプリがプリインストールされている。飲み物を取りに行ったついでにTikTokで15秒の動画をちら見させる、というのは優れたアイデアだろう。動画を見ている間に「予定を調べよう」「家族にメモを残そう」など、スマート冷蔵庫に接する時間をより増やすこともできる。他社の冷蔵庫では動画アプリ「iQIYI」(中国語名は「愛奇藝」)を搭載したものも見かけた。

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冷蔵庫の扉でTikTok。スカイワースのアイデアだ

他にもスマート冷蔵庫の利用時間を増やす機能を各社が模索している。メイダはディスプレイの下にセンサーを内蔵し、指先でタッチすると心拍数や動脈血の酸素飽和度を測定し記録することができる。日々の健康管理が冷蔵庫でできるわけだ。なおデータはスマートフォンでも共有可能とのこと。

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冷蔵庫にタッチして健康管理ができる(メイダの製品)

一方、ハイアールは冷蔵庫内の食品管理にカメラを使った画像認識を取り入れようとしている。冷蔵庫のドアを開けると庫内カメラが起動し、食品の出し入れを感知。ビールを置けばその銘柄を判定し、果物を置けばそのサイズも計測できるという。そしていつ冷蔵庫に入れたかというデータも同時に記録できるため、庫内のデッドストック食品を減らすこともできる。外出先からスマートフォンを使えば、今自宅の冷蔵庫にどんな食材が残っており、賞味期限が近いものはどれか、といったことまで把握できるようになるわけだ。

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庫内カメラで出し入れした食品を記録できるハイアールの冷蔵庫のコンセプトビデオ

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